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対日買収―――中国企業の直面する統合試練

項兵

 中国企業の日本企業買収が「日本ブランドと研究開発+中国での組み立てと市場+世界市場」という理想モデルを現実のものとした。こういったモデルは、現実のビジネス運営で成功を納めている。中国企業は、日本企業の特性を充分に理解・認識し、それをもとに資源統合戦略を進めなければならない。 

 

 

 金融危機と本国経済の長期低迷の二重の挟み撃ちを受け、日本企業の中国株主受け入れによる中国資本の日本株式市場参入、日本企業による将来的な中国市場参入の足がかりとしての中国資本導入の傾向は強くなっている。中国企業の対日買収に得難い歴史的なチャンスが訪れた。

 日本のM&A仲介会社レコフ(以下RECOF)の統計によると、2010年だけで中国の対日買収件数は37件にも達し、2009年比で42%増加したという。在日投資では数の上で常にトップだったアメリカを抜いて初めて一位となった。この年、BYD(比亜迪)が自動車金型メーカーの館林工場を、完美時空が日本C&C Mediaを、また、御生堂の日本製薬工業株式会社、魚尾獅の本間ゴルフ、山東如意グループのレナウン、ハイアールによる三洋の白物家電生産ライン、レノボによるNECのパソコン業務と買収案件が続いた。帝国データバンクはこれを「中国企業による日本企業買収の潮流がますます激しくなる」と表現した。

 中国企業の対日買収の全体状況を詳しく知るために、長江事例研究センターでは「2007年7月―2011年12月、中国企業の対日買収事例」データを整理・分析した。またサンテック(無錫尚徳)による日本エネルギー大手MSKの統合、杉杉グループが伊藤忠の助けを借りモデル転換をした例、上海電気の二度にわたる日本企業の買収と統合、中国動向のフェニックス統合等の事例について深く研究するとともに、企業創始者、役員、統合に参与する第一線担当者に対し一連の調査とインタビューを進めた。国内外の学術機構の最新研究、特に長江事例研究センターの詳細な分析を元に、次のような結論に達した。

 

 ほとんどの外資企業にとって、日本市場の閉鎖性は障壁となるが、それは主に日本の財閥が日本経済と商業利権の70%を握っていることに起因する。そのため最初の協力・取引(相手)には財閥に所属する企業を選択する。

 

1.中国企業の対日買収に新たなチャンス到来
 2008年、日本政府が外資に対し門戸を開き始めたまさにその時、世界的な金融危機が勃発し欧米諸国の対日投資額はこれに合わせて年々落ち込むこととなった。2010年、2011年に至っては、日本からの多額の資本撤退さえ起きた。これに対し2010年、中国の対日投資額は逆に三倍の伸びを示した。金融危機と本国経済の長期低迷の二重の挟み撃ちを受け、日本企業の中国人株主の増加による中国資本の日本株式市場参入、将来的な日本企業の中国市場参入の足がかりとしての中国資本導入の傾向は強くなっている。中国企業の対日買収に歴史的なチャンスが訪れたといっていい。
 2010年、中国企業の対日買収は、数ではトップになったが、直接投資額はわずか3.14億ドル。これは対日直接投資額の国別ランキングでは8位、占める割合はわずか2.1%にしかすぎず、イギリス(32%)、アメリカ(20%)、ドイツ(15%)、シンガポール(11%)、フランス(8%)(*注1)を下回る。中国の対外直接投資額の中でもわずか0.49%(*注2)しか占めていない。こういったデータを見ると、中国企業の対日投資の成長可能性が巨大であることが見て取れるだろう。

*注1データ出典:日本貿易振興機構(JETRO)
*注2データ出典:2010年中国対外直接投資統計公報

2.日中資源の統合には、相互補助という長所がある
 日中という二大経済大国の貿易分野での協力、ならびに産業的な分業の垂直統合は、優勢を互いに補い合える可能性がある。先進国として、日本の強みは工業、IT関連事業、製造、サービス業、企業の新製品開発等の分野に集中する。これに対し、中国企業はこれまで主に大規模経済を頼りに勃興し、労働力コストの安さという強みを生かしてきた。将来に向かい、中国企業は産業チェーンを作り上げ、付加価値を上げたいという希望を持つ。日本から中国への輸出商品は、旋盤、電子部品等のハイテク製品が中心であり、中国から輸入するのは付加価値の低い紡績品、農産物、日用家電等が中心だ。このような相互補助的な関係性は、早くから日中両国の企業の認めるところだ。過去10年、日本の在中企業の数は三倍となり、日本のトップ企業1,000社はすべて中国に生産・販売拠点を持つ。これに対し中国企業による日本企業買収は、ブランド、技術、管理経験といったさまざまな資源を統合することを目的としている。

3.日中企業の統合は、「日本ブランドと研究開発+中国での組み立てと市場+世界市場」という理想モデルを現実のものとした。
 「日本ブランドと研究開発+中国での組み立てと市場+世界市場」というモデルは、相互補助、ウィン・ウィン・モデルとして、ともに手を取り合い中国ひいては全世界市場という巨大空間を開拓できる可能性がある。

4.民間企業が推進、製造がトップ
 長江事例研究センターの調査データを見ると、中国企業の世界的な海外買収の6割は国有企業であるのに対し、日本企業買収の8割近くを中国の民営企業が主導する。中国企業の対日買収の52%が製造業に集中し、買収動機は上から順番に「市場開拓、技術研究開発、資源活用、金融戦略」である。買収規模は全体的に小さく、買収金額5,000万ドル以下が49%を占め、5,000万ドル以上が14%、その他37%は買収金額を公開していない。株式50%以上を保有する事例が56%を占め、その中で全面買収が26%を占める。

5.外資による統合に対する阻止力が強く、中国企業は特殊な試練に直面
 世界的に見ると買収後の統合成功比率は50%に満たないが、日本市場における買収統合に成功した企業は、数えるほどしかない。新興市場から来た統合者である中国企業は特殊な試練に直面する。

外資で直面する困難
 過去10年、外資企業の日本への投資・経営は、なぜ困難に直面してきたのだろうか。日本貿易経済協力局及び貿易振興課が継続調査を展開し、それを元に「対日直接投資の外資企業意識調査報告書」を発表した。これによると、外資の日本市場における経営が困難に遭遇する主な原因は上から順番に以下のとおりである。

1、 経営コストがあまりに高い。
2、 顧客の商品品質への要求が高い。
3、 マルチカルチャーに対応できる人材の不足。
4、 日本市場の閉鎖性と独自性。
5、 社員への福利厚生とボーナスを充分に実施できない。

 長江商学院事例研究センターの実施したインタビューでは、多くの中国企業がこれに対し、大いに賛同する結果となった。「商業コストが高く、顧客の要求が高く、人材の確保が難しい日本市場の特殊性」が、中国企業の日本経営における最大の試練となっている。ここでは、本報告の研究結果と本センターのインタビュー調査研究をまとめてみた。今後、日本市場への進出を狙う中国企業に対し参考となることを願う。

経営コストがあまりに高い
 日本における企業の経営コストがあまりに高いことは、日本で経営する多くの外資系企業が口を揃えていうところである。
日本経済産業省の調査によると、日本での経営コストには、主に「人件費、不動産費用、税金、物流コスト、設備費用、通信費、公共費等」があるという。こういった要素の中で、毎年行われるアンケート調査で回答を求められているのが、最初の4項目である。今回調査した中国企業は、日本の経営コストがあまりに高いという点に深く同意した。但し、この点が中国企業の対日投資にあまり強く影響しているわけでもない。その理由の一つに、ほとんどの中国企業は、日本の会社を買収する前に経営コストの差について納得していることがある。二つ目には、中国企業の買収目的の90%以上が、対日買収を通した自社の全体的な経営能力の向上にあるからだ。たとえば、日本企業の技術、工程、品質管理体系の中国本社への移植、日本市場の開拓等であり、そのための買収にかかるコストは、そこまで重要ではなくなっている。

顧客の品質に対する要求があまりに高い
 日本の消費者の商品に対する要求は、主に品質、価格、サービス、納期の4項目にあり、その要求基準の高さは世界的に有名だ。そのような背景から日本企業は世界的にも最高の商品を生産することになり、同時に外資企業の経営の難易度を上げている。
 この問題は中国企業にとって特に大きな試練となっている。これまでの欧米企業の対日投資の多くは、技術輸出型であり、製造業務は依然として日本現地の企業に頼っていたため、これまでの過去10年彼らが顧客の商品への要求が高すぎるという難題に遭遇したことはなかった。これに対して今、中国企業の対日買収の多くは製造業務を日本から中国に移転させ、日本で?の生産コストを下げる計画を立てている。たとえば、ユニクロのサプライ・チェーン組織モデルを真似ようというものである。ユニクロの成功の秘訣の一つが、中国で開設した専門工場の生産能力の高さにある。そういった専門工場の品質、価格、サービス、納期等は、すべて厳しくマニュアル管理されているほか、ユニクロはサプライ・チェーン全体への極めて強い掌握能力を持つ。この二つの大きな支えがない限り、生産を中国に移転させても、主要市場が日本にある限り極めて大きな試練に直面することになる。

人材の不足
 日本で最も優秀な人材―――日本の国情とその市場特性を「本当にわかっている」人は、ほとんどが日本の大手企業に属し、定年までそこで働き続ける。その結果、日本で新たに経営する会社が、優秀な中高年の管理職を採用するのはきわめて難しくなっている。買収を行う場合、最も重要な仕事の一つが買収企業の責任者を確保することだ。中国企業にとって海外買収における最大の試練の一つといえるが日本市場ではさらに難易度を増す。このため中国企業の多くは譲歩するとともに干渉を控え、被買収企業のチームの安定性の維持に留意する。長江事例研究センターの研究によると、多くの中国企業は、被買収企業側の管理チームの残留を望んでいる。ところが中国企業の在日買収・統合状況の調査研究結果を見ると、被買収企業側管理チームの残留にはメリットとデメリットがある。

日本市場の閉鎖性と独自性
 ほとんどの外資企業にとって、日本市場の閉鎖性は大きな障壁だ。その理由は主に日本の財閥が日本経済と商業利権の70%を握っていることによる。そのため協力・取引(相手)には財閥に所属する企業を選択する。
 このほか日本企業は取引相手との人間関係を重視する。この二つが理由となり、外資企業は多くの場合経営に関して遠くから指をくわえてみているだけとなる。日本市場の閉鎖性と独自性を知ることは中国企業の統合業務の展開に、極めて重要となっている。
 買収側として、被買収企業側チームの支持を得ることは特に重視しなければならない。また意見の相違では、相手を説得して意見を変えさせること、特に「慣習への挑戦と変革は必ず秩序どおりに進める」ことを重視しなければならない。これに対し、中国動向日本フェニックス理事長の孫建軍氏は、大きく賛同する。「外資企業は慣習に挑戦し日本に深く根ざそうと考えてはならない。融合するには、協力が不可欠であり、持っているノウハウを共有し合えるようにならなければ相手の信頼と妥協を勝ち得ることはできない」という。

ボーナス実施の不十分
 日本企業の管理体系は「年功序列制」と「終身雇用制」に基づいている。つまり勤務年数により社員の給料を決定し、かつ社員には終身雇用を保証する。このような管理制度は、却って社員のやる気を引き出すシステムを弱め、日本を「能力に対し経済的な評価のない社会」とならしめている。バブルの崩壊後、日本企業は社員のやる気を引き出すシステムづくりに力を入れ業績査定制度を導入したとはいえ、全体的な効果はごく限られている。
 これは社員の積極性の触発を至上とする中国企業と大きな対照を成しており、対日統合を果たした多くの企業が突き当たる問題となっている。中国動向がフェニックスを統合した際、ある業績ボーナスの給付と給料調整の面で日本側のある役員の強い反対に遭い、相手は辞職するとして威嚇した。日本で中国式業績査定を実施する際に遭う衝突の大きさを見て取ることができるだろう。但し、中国動向は業績査定が末端の社員に効果的に働いたことを把握し、これを武器にしてフェニックスの変革を推進した。

中国企業の対日統合の特殊な試練
 過去10年において対日投資をしてきたのは欧米企業が中心であり、その対日投資はほぼ技術輸出、または日本の製造によるコスト削減を狙っていたため、中国企業の対日投資の動機と特性とは大きな違いがある。以上のような対日投資に共通する問題のほかにも、長江事例研究センターの調査研究インタビューによると、中国企業の対日投資には研究の価値のある特殊な試練があるように思える。

民間の中国に対する姿勢
 中国企業の対日買収が日本政府の政策上の支持を得る一方で、日本の企業と民間からの精神的な抵抗に遭うことは、避けられない。日本に比べて次第に強大になっていく中国に対し、日本の庶民の気持ちは複雑である。日本の製造業が外に流出し、日本国内の産業空洞化が進み、将来中国が日本の経済・産業に対する脅威となるのではないかと憂慮する人もいる。このような精神的な抵抗は、日本自身のアジアひいては世界における地位の失墜という現実から来ている。このような複雑な心理も中国の対日買収が常にさまざまな抵抗に遭う原因でもあり、買収プロセスが二転三転し、紆余曲折に富んだものとなる理由でもある。

労働組合問題
 中国国内で経営する中国企業は、労働組合から圧力を受けることはないが、これも中国企業が海外買収・統合において直面する最大の試練となっている。つまり労働組合が協力しない、ひいては強い抵抗さえ示すということである。労働組合との激しい衝突のため、上海汽車の韓国雙龍(サンヨン)の買収が最終的に失敗に終わった。またTCLのフランス・トムソンの買収も労働組合問題により破産清算を申請することになった。サンテックのMSK買収後、MSK所属の大牟田工場を閉鎖する際、労働組合の反対に遭い、大牟田の元社員は自分の仕事を守るため、社員による工場買収(EBO)方式を取った。日本の投資基金に買収に参与するよう呼びかけ、最終的に工場の経営権を勝ち取った。この人員削減の波風の引き起こした雇用防衛戦のため、最終的にサンテックは日本の世論から一層の非難を受けることとなり、その後の日本での発展に対しマイナスの影響を残すこととなった。
 日本の社会は、工場閉鎖、人員削減等に対し極めて敏感である。そういったことは、日本の社員と社会の精神的な抵抗を引き起こしやすい。これも最近中国企業の日本企業の買収が抵抗を受ける大きな理由の一つとなっている。中国企業は、買収前に人員削減と工場閉鎖、工場移転の方法と影響について詳しく評価してから総合的に買収の必要性を判断するよう提案したい。

日中のフローと職位引き継ぎの難易度の高さ
 日本の企業のフローの詳細化、ならびに職位の責任の明晰性は、全世界でも屈指のものである。このため、管理の遅れている中国企業としてのどから手が出るほどほしいものであることが多い。日本企業を買収するというと、中国の企業家の最初の反応は、そのような詳細化されたフローと職位を中国国内に移植したい、というものだが、そのプロセスは簡単にはいかない。
 中国動向はまさにそのような試みをしたが、日本企業のフローと職位は、社員一人一人の心の中に根差しており、他の企業の学習に便利な文字記録(例:フローチャートや職責等)があるわけではないことにすぐに気付いた。このために中国動向はアメリカのコンサルティング会社を招き、日本の会社のフローと職責を整理し、詳しい引き継ぎ、打ち合わせフローを制定した。ところが、双方の仕事のフローの差があまりにも大きいため、新しい職位のフローは日中双方の職員が自分は何をするべきかわからなくすることに気付いたのである。仕方なく、日中双方ともにそれぞれの最初の方法に戻らざるを得なかった。日本企業の詳細なフローと職位制は、日本の工業の精髄に所在するところだが、これは日本の工業文化、管理制度の数十年の蓄積により成立しているのであり、それをどのように中国企業で活用できるのかについてはなお研究が待たれる難題となっている。

産業チェーンの移転の難しさ
 日本市場はコストが高く、特に長期的な商社モデルにより中間業者が形成されているため、サプライ・チェーン関係では効率の低さが目立つ。これも日本のコストが高くなっている原因の一つとなっている。ほとんどの中国企業は、まず元の産業チェーンの中の生産サプライ部分を中国に移転し、研究開発・設計等を日本に残すことを考える。しかし産業チェーンの移転プロセスで遭う抵抗は予想外に大きいことが多い。
 第一は、買収された日本企業の内部からのものである。日本人社員の多くは長年のサプライヤーとの協力関係を放棄することを望まず、相手企業の生存に影響し、破産や人員削減等につながるような事態を避ける。第二は、サプライヤーの集団的な不協力である。一つのサプライヤーを切ると、たちまち日本のサプライヤーの間で集団事件に変化することになる。中国企業の「不安全性」を憂慮し、多くのサプライヤーが自分から協力を断つ。第三に中国で同等能力をもつサプライヤーを探すことができるかどうかは、サプライ・チェーンの移転においては極めて重要となるが、これには時間と調整、サプライヤーへの長期的な能力育成が必要なことが多い。第四に製品の国家規格の違いが大きくサプライ・チェーンの統合をますます難しくしている。

 (写真キャプション)サンテックが日本市場に進出する際、不動産ディベロッパーを断念して家電専門店との提携に変更した。このようなルートの革新の効果は今後さらに観察を続ける必要があるだろう。

販売ルートの違い
 日本企業の販売ルート体系は中国企業とはまったく異なる。第一には専門流通ルートがほぼ商社に抑え込まれており非常に強力で、企業が受け身的な立場に回っていることがある。第二に専門的かつ機能的なルートが分けられており、特に中小ブランドがチャンスを得ることは極めて難しい。第三に特殊な販売ルートは関係者が入り乱れた複雑な構造をなしており、ブランド・メーカーの制御できる部分が極めて小さい。
 サンテック(無錫尚徳)を例にとると、家庭用ソーラー・エネルギーの伝統的な販売ルートは、不動産ディベロッパーの手に握られている。このようなルートは、日本で販売を展開しようとする外資企業にとって超えることのできない障害となっている。中国動向やサンテックは、相次いでこのような障害に突き当たっており、ルートによる制約を抜け出すため、革新的な戦略を試みた。中国動向はユニクロに倣い直営店を開店し、サンテックは不動産ディベロッパーを断念して家電専門店との提携に変更した。このようなルート革新の効果は今後なお観察を続ける必要があるだろう。

中国方式での日本企業統合にはリスクあり
 中国企業が日本企業を買収する前、通常は当然、中国的な考え、思考回路、スタイルによってどのように日本企業を統合し、日本企業の現在の苦境を変えるか、と考えることだろう。これは中国企業のこれまでの成功経験をもとにしているが、中国市場の特徴と、置かれている発展段階の違いを考慮していない。
 たとえば、コスト削減の面で中間業者を排除し、生産を中国に移転することは、思いつくのは簡単だが実践するとなると極めて難しい。従来の業者を切り捨て、新たなルートを切り開くという場合も、中国のルート・モデルで日本では革新的な方法となり成功できるかどうかはなお観察を待たねばならない。年功序列を切り捨てた業績査定制への変更等も一見簡単だが、そのために起こる衝突の大きさは計り知れない。
 日中両国は置かれている発展段階が異なり、成熟した日本の市場は成長過程にある中国市場とはまったく異なる。たとえば、消費者の好みも違うために消費習慣、運営規範、ブランド特性等にも大きな違いがある。市場が違うため研究開発・設計の同時実施が難しくなり、生産チェーンの統合の問題を起こすことになる。また大規模な効果を上げられない等の問題も起きてくるだろう。
充分な準備と調査研究がないまま、盲目的に中国スタイル、中国経験で日本の会社を統合しようとすれば日本の企業に与える打撃、ならびに統合の直面するリスクは計り知れないものになる。
 アクセンチュアと『エコノミスト』情報部の研究結果によると、中国企業がよく犯す過ちは、買収前の調査研究が充分ではなく発展計画を充分に考えない・制定しないか、被買収企業側の経営陣との意思疎通が不十分なために統合の際、意見が分かれ最終的に残留した管理職が統合の抵抗勢力となり、買収した企業が膠着状態に陥ることだという。
 したがって「日本ブランドと研究開発+中国での組み立てと市場+世界市場」という対日買収の理想を実現するためには、中国企業は必ず事前に「事情通からレクチャーを受け」、買収後、戦略と統合案を調整し続け、日本独特の企業文化と商業環境に適応しなければならない。さもなければ、「東瀛之夢」(日本への憧れ)が、「東瀛之痛」(日本への痛み)となってしまうことだろう。

 

(本文は『中国企業対日買収研究報告』からの抜粋である。詳細は、
http://www.ckgsb.com/Article/Detail.aspx?ColumnId=419&ArticleId=11013 を参考のこと。本報告は、項兵教授の指導の下、項兵教授と長江事例センター研究員の周一、李夢軍が共同執筆したものである。)

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