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無印良品―――世界をシンプルに

    無印良品は消費者の個性化ニーズを受けて作られた商品だ。当時、巷の商品のほとんどは付加価値が大きな部分を占めたが、無印良品は逆に付加価値を棄て消費者に最も本質的なもの、最もシンプルなものとは何かを見せた。まさにそれが無印良品ブランド設立の原点である。

    松井忠三氏は店舗ロケーションが非常に重要とみる。顧客の月間平均購買回数が2-3回となるのは、無印良品が店舗の及ぼす影響を非常に重視したことが功を奏している。

 

    貿易、技術、投資のグローバル化のロジックは理解しやすい。貿易は双方のことであり、技術には実証があり資本は利益に伴うからだ。しかしデザイン、またはさらに広い意味でのカルチャーのグローバル化はただのパラドックスにしか聞こえない。つまり、デザイナーは、当たり前のように文化を飛び越えることができるので、クロスカルチャーな環境にいる消費者にとって異国情緒を感じる要素を取り込むことが出来る。例えばサイードの『オリエンタリズム』のように強烈な文化に寄り添うといった論理は文化とグローバル化がパラドックスとして存在する。
    そういったグローバル化モデルの市場余地と持続性が、逆に消費者を飽きさせることにもなった。これに対し「無印良品(MUJI)」はまったく違うモデルを発展させたのである。それぞれの土地に元から存在する要素を媒介とし、人類が共有する本能へ訴えかける商品を生み出した。
    無印良品は1980年代に日本で誕生した。9種類の家庭用品と31種類の食品の生産から始まり、今や6,000種類の良品ファミリーを抱えるまでに発展した。現在日本国内に375店舗、従業員は約5,000人、203ヶ国で業務を展開し165店舗と約2,000人の従業員を抱える。

限りない「シンプル」への道
    「無印良品」の日本語の漢字は、「ブランド標識のない優れた製品」を意味する。カテゴリーは日用品を中心とし、シンプル、素朴、エコ、人にやさしい等をコンセプトとして創立当初から「素材の選択」「工程の改善」「包装の簡略化」をテーマとし、パッケージと製品デザインには一切ブランド標識がない。
    無印良品は、形式上はブランド標識を目立たないようにしているが、人類が共有する本能に訴えかけるデザインは「良品」のイメージを突出させており、その商品が提案するナチュラルかつシンプルな生活スタイルが人々から支持されてきた。無印良品の商品は日本の茶道で追求する素朴さのように、派手ではないが品格を備える。そういった理念を元に会社は一連の生活用品を開発してきた。
    無印良品が誕生したのはちょうど1979年、第二次オイル・ショックの余波も冷めやらぬ頃。日本経済は長年の高度成長を経て成熟しつつあった。良品計画株式会社の松井忠三会長は、2012年、中日CEOフォーラムの講演で次のように振り返っている。「経済の高度成長期には、国民はレクサス、ベンツなどの高級消費品のような、より新しくより良い商品を求めるが、成熟期に入ると個人の価値観をもとに商品を求めるようになり、価値観の違いが個性化ニーズの違いを生み出す」と。
    そのため「無印良品は、消費者の個性化というニーズに対し、作り出された商品です。当時、巷のほとんどの商品は付加価値が大きな部分を占めていましたが、無印良品は逆に、付加価値を棄て、消費者に最も本質的なもの、最もシンプルなものとは何かを示しました。それこそがまさに無印良品ブランド設立の原点でした」。
    デザインのシンプルさ、素朴さに対応して無印良品は低価格を維持する。松井氏は、無印良品商品の日本での小売価格は、同等商品の70%まで下げ、かつ品質を保証することができるという。「原材料、工程、包装等の面でコストを抑えることができます。たとえば、できるだけパッケージを簡略化するといったことです」。このほか「当社にはメーカーと物流業者の二つの顔がありますから、そのおかげでコストを半分にまで落とすことができます。売上げの増加に伴い利益は自然と増えるのです」。
    店舗に至っては、さらに無印良品の「前衛基地」—グローバル化の切り込み尖兵-といえる。松井氏は「店舗のロケーションは非常に重要です。売り上げを伸ばすにはいかに頻繁に足を運んでもらうかが要です。店舗はできるだけ消費者に密着しなければなりません。無印良品はできるだけ大都市に店舗を展開し、それぞれの店舗の機能を最大限に活かし、顧客を惹きつけようとしています」。リピート客は、売上高の重要な要素であり、「顧客の月間平均購買回数が2-3回となるのは、無印良品が店舗の及ぼす効果を非常に重視したことが功を奏しています。店舗展開により消費者を惹き付けることは、中国、日本の違いに関係なくともに重要な役割をはたしています」。

 

人は「品」に集まる
    無印良品は「非常にシンプル、余計なものはない」という純粋さを突出させたところに価値があり、さまざまな層の消費者を魅了することができる。松井氏は「無印良品の日本国内における主要顧客の80%は女性です。年齢の幅は広く、20-30代の人が総数の中で60%を占めると同時に、10代と40代のお客様がそれぞれ20%ずつを占めています」と紹介する。
  これは世界各地の消費者を惹きつける条件でもある。「もっとも本質的、シンプルなものに国境はありません。どんな場所にでも発展の余地はあります。」無印良品が日本を飛び出し、世界の市場に出て行った時もそのブランドの位置づけが変わることはなかった。特にアジアでは、多くの国と地域は、当時の日本のような状態にあり、経済の高度成長の後の成熟期に入っていた。企業がある市場に参入した場合、まずは利益を出さなければならない。利益が出るまでの時間があまりに長くなれば、経営に響くことになるが、無印良品はこのために「店舗のテナント代と物流コストの削減に少なからぬ工夫をこらした」という。

松井氏は、企業のグローバル化に必要な四つの条件を次のように総括した。
1.ブランド・イメージの樹立が極めて重要であり、無印良品はブランドの位置づけを決め、本質的かつ低価格の商品を消費者に提供した。
2.社員の能力は企業発展の重要な要素となるが、社員の能力と商品開発は別問題である。商品開発の過程で常に消費者と緊密につながり、始終消費者の生活空間を考えた後に新商品の開発を考えなければならない。
3.無印良品の商品は投資回収周期が短く、ほとんどは2年以内にすべての投資を回収することができる。市場に投入して2、3ヶ月で黒字となる商品もある。
4.ビジネス・モデルの重要性。各地の市場の特徴にどのように適応していくのかが非常に重要である。たとえば台湾・香港地区でのブランド戦略の展開は、必ず現地の特徴に沿ったものでなければならない。中国で日本のモデルをそのまま持ち込めば、無印良品も成功していたかどうかはわからない。


2005年、無印良品上海直営店が正式オープン。無印良品が正式に中国市場に参入したことを象徴した。現在、中国では北京、大連、瀋陽、成都、重慶、武漢等の都市に展開している。無印良品の商品投資回収周期は短く、ほとんどは2年以内にすべての投資を回収することができる。市場に投入して2、3ヶ月で黒字となる商品もある。無印良品の商品の小売価格は、同等商品の70%にまで下げ、かつ品質を保証することができる。

 

 


中国における「無印良品」
    2005年7月、無印良品上海直営店が正式オープン。無印良品の正式な中国市場参入を象徴した。それ以来、北京、大連、瀋陽、成都、重慶、武漢等の都市に広がっている。特に上海、北京では、すでに十数軒の店舗を構える。
    無印良品2012年度の拡張計画において、日本国内の19軒に対し、海外は43軒となる。まさに松井氏のいうように「今、海外での発展のほうが顕著」だ。その中で中国が25店舗を占める。「中国での新規開店は、日本国内よりも多くなっています」。
    「中国では、無印良品での買い物を楽しんでくれる若い人がたくさんいます。これは当社の商品への好感から来ていると私は信じています」。松井氏は、中国の消費者が奢侈品を好む現象に関連してこう語った。「無印良品そのものの位置づけはハイエンド市場ではないが、無印良品はそれでもなお安くて質のいいものの提供を保証する」。たとえ「関税のため中国での小売価格は安くないのですが、それでも多くの総合スーパーが扱ってくれています。無印良品が幅広い層の消費者に受け入れられていることがそれでわかりますね」。
    もう一つ特殊な状況がある。「当時、中国市場に進出しようとした時、商標が中国でサイバー・スクワッティング(転売などで利益を得る目的で商標を保有する犯罪行為)されるという苦しい状況に遭いました。もちろん、最終的には、「無印良品」としてスムーズに参入することができたのですが。」さらにしばらく偽の商品中国市場に出回った。最初は法律上の制限により中国で販売することのできない商品があったが、今は日本で取り扱われている商品のほとんどは中国でも販売することができる。これも無印良品の努力の成果だ。

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