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中国に対する6つの誤解

長江商学院学院長 項兵


中国は世界の工場として過去30年に渡り、西側諸国の経済を豊かにし、世界中の人々の生活水準を改善してきている。中国の開放性と、産業によっては世界最大あるいは世界第2位の規模が、世界中の外資企業に対して利益率の高いビジネスチャンスを提供している。
西側諸国は、自らが原因となっている経済問題を矮小化するために、中国をスケープゴートにすることを繰り返しており、以下の「6つの誤解」がこれを助長している。今後、日系企業を含む西側諸国の企業が、中国ビジネスに対してより建設的に関わっていくためにも、この誤解を明らかにする必要がある。
(誤解1) 中国経済は閉ざされているという見方。実際は世界で最も開かれた経済の一つで ある。
(誤解2) 中国のビジネスは国有企業によって独占されているという見方。現実は、民間企業も繁栄している。
(誤解3) 中国の政治システムは権威主義であると言われているが、実際は能力主義である。
(誤解4) 中国の統治機構は硬直的であると言われるが、歴史を振り返れば、多様性を持った柔軟な統治を行ってきている。
(誤解5) 中国は攻撃的であるという見方。これも歴史を振り返れば、全般的には平和で人間主義的であったということが分かる。
(誤解6) 中国経済は脆弱であると見られているが、実際には今後も堅調な成長を遂げる基盤を維持し続ける。
 
誤解1: 中国は閉鎖的?開放的?
1 2011年のデータによると、中国のGDPに占める貿易比率は59%にのぼるが、日米の割合は31%に留まっている。
2 2011年にサムソンが中国からの輸出で稼いだ売上は、同社のグローバル売上の40%を占めている。
3 2011年の中国国内における外資系企業の輸出額は、中国全体の輸出額の55%を記録している。(2009年にはすでにドイツを抜き、世界最大の輸出国となっている。)
4 中国のコンビニエンスストアに行くと、そこはグローバル企業の製品やブランド品であふれている。
5 過去10年間で中国は、世界で第2位にあたる額の海外直接投資を受け入れた国である。
(最近では世界1位になったという意見もある。)
6 シスコは中国でインターネット基幹インフラの70%を提供しており、ロッキード・マーティンはIBMやマイクロソフトと共に中国の航空管制システムを提供している。 一方、華為(HUAWEI)が米国でビジネスを展開するにあたっては、米国内から強い抗議を受けている。
 
誤解2: 国有企業 vs 民間企業
1 防衛、電力(発電・送電)、石油化学、通信、石炭、航空、海運といった7つの戦略的産業は、国有企業(SOEs)によって独占されている。一方、GDPの50%、雇用全体の80%、新規雇用の90%は民間セクターによってもたらされている。
2 フォーチュン500社のうち中国民間企業は次の5社である:鉄鋼メーカーの江蘇沙鋼集団(時価総額321億ドル)、華為(時価総額315億ドル)、レノボ(時価総額296億ドル)、中国最大の綿紡績会社の山東魏橋紡織集団(時価総額249億ドル)、大手自動車メーカー吉利汽車とスウェーデンの自動車会社ボルボ・カーズの親会社である吉利控股集団(時価総額234億ドル)。これらの民間企業は国からの支援なしで、素晴らしい発展を遂げている。
3 中国的な考え方では、国家は資本主義が制御しにくいのでもっとバランス良く、全体的な発展と成長を助ける役割を果たし、調和の取れた社会と起業家精神と飛躍的なイノベーションを促進することである。
 
誤解3: 独裁主義 vs 能力主義
1 中国におけるリーダーの選出方法は、特定の人物による独裁体制を産まないように構築されている。
2 中国政府の指導者層は、その世代における最も聡明で有能な人物であると考えられている。従って、中国共産党中央政治局常務委員会のメンバーに就任するためには、地方政府と中央官庁のポジションを経なければならない。
3 中国共産党は8,200万人以上の党員を抱えており、これはほぼドイツの全人口に匹敵する。共産党という巨大な組織が指導者層を選任するための母集団となっている。このことからも中国が過去の帝国主義とは基本的に異なる体制であるということが分かる。
4 中央政治局常務委員会には、経済の意思決定において、様々な意見が存在する。
5 以上のことから中国の政治体制は、経験の浅い指導者が最高位のポストに就任してしまうことが可能な他の国の体制とは対極にあると言える。
 
誤解4: 中国王朝の交代サイクルとグローバルな影響/過去の代表的な王朝における開放性
1 中国史を振り返ると、劣悪な統治は繰り返し崩壊している。約300年毎に新しい王朝が誕生している。アメリカ合衆国が成立して、まだ300年経っていないことは注目に値する。
2 唐・宋時代の中国は異文化に対して非常にオープンであり、日本人総督やイスラム教徒の提督を高官として採用していた。歴史をみれば、中国は外に対して開かれている時にこそ繁栄しており、将来においてもオープンであり続けることが重要である。
 
誤解5: 中国は攻撃的?平和的?
1 グローバリゼーションの最大の受益者である中国が、好戦的になっても何の得もない。 中国経済は貿易に依存するところが大であり、海洋安全保障にとって建設的かつ主要なプレイヤーである。
2 中国は、外部からの批判を考慮して、自国民の生活水準を上げる為に多大な努力を払ってきた(現在中国の一人当たりのGDPは米国の8分の1だが、2020年には裕福と言える社会になる見通しである)。過去において平和的な環境は、中国の発展にとって基本的な要件であったので、これは将来に向けても欠くべからざるものである。
3 中国の儒教は、社会の調和をもたらすものとして、内部の序列を重視している。
4 中国はイデオロギーを輸出することには興味を持っていない。従って、G2という枠組みにも積極的でないし、むしろ調和の基本要件として多様性に重きを置いている。
 
誤解6: 中国の体制は脆弱?盤石?
1 西側諸国は、中国の爆発的な経済発展がもたらす短期的な副作用、例えば、社会に対する不満や不安、環境破壊、経済の行き過ぎた過熱と腐敗といったことを好んで指摘している。
2 しかしながら中国政府は、これらすべての問題を把握しており、次期5か年計画で解決へ向けて取り組んでゆくことを約束している。
3 一方、中国のファンダメンタルから見て、中国と世界に及ぼす経済効果は大いに期待できる。
 a   中国における都市化は2020年までに、50%から70%に進展すると見積もられている。
 b   中国のサービス産業が経済全体に占める割合は43%で今後、成長が見込まれている。 米国のサービス産業が同国の経済全
   体に占める割合は80%。
 c   中国の消費が経済全体に占める割合は55%だが、米国の88%という数字をベースに考えると今後、成長する。
4 上記のような楽観的な見方は、西側諸国の自国環境に対する持続的かつ悲観的な見方とは対照的である。しかし多くのデータが、中国は今後20年間に渡って世界経済の牽引役であり、海外に開かれたマーケットであり続けることを示唆している。
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