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同族会社の承継はもはやタブーではない

5月4日のブログでも述べたように「フォーブス中国語版」が2014年に行った調査では、上場する民間企業1485社のうち同族会社は50.3%に達するという。5年前の中国では歓迎されなかった同族会社やその世代交代に関する話題も今ではオープンに語られるようになった。

この夏、長江商学院はコーネル大学、ネクストオポーチュニティグループ、USチャイナパートナーズと連携し「iLEAD」を開催する。これはアメリカと中国をはじめとした各国の同族会社の次世代経営者に、グローバルリーダーシップの開発とネットワーク構築を提供するユニークなプログラムだ。次世代のリーダー達はニューヨーク、フィラデルフィア、北京と上海に滞在し、3週間という短期間のうちにスキルや現実的な対応方法を身につけ、参加者間のネットワーク構築をおこない、世界へと羽ばたいてゆく。

「iLEAD」で中国市場および主要な中国の同族会社の講義を行う、滕斌聖(とう・びんせい)経営戦略マネジメント論准教授は一連の変化にいち早く気づいていた。今回は同族会社の承継について話を聞いた。


事業家が"同族会社"を容認し始めた

Q:ご存知と思いますが、習近平国家主席は今年の春節の演説で、家族の絆や家族教育について強調していました。近年、准教授が同族会社について行ってきたリサーチと考察から、どのような変化が読み取れますか?


A:本学では2008年に同族会社向けプログラムを開催しましたが、残念なことに第1回目の講義終了後に延期となってしまいました。当時は受講生を含む多くの事業家が"同族会社"という言葉に過敏になっていました。受講生の一部は、「会社内に家族は2-3名しかいないのになぜ同族会社と言わなければならないのか?」と不満を漏らしていました。いま、同族会社と言われてネガティブに受け取る事業家はいないでしょう。本学では昨年、2008年同様のプログラムを開催し高評を得ています。習国家主席が"家族の絆"について言及したことから分かるように事業家は、同族経営を恥じる必要はなく、経営権を子孫に継承していくことは誇らしいと感じ、また、より多くの事業家が、一族での会社経営が可能と考えるようになっています。


Q:現在の状況についてどうお考えですか?

A:海外での実証研究では二代目への承継が成功したケースはわずか30%となっていました。中国における成功率はそれを上回っているようですが、それはまだ母数が多くないからかもしれませんし、実質的な承継がなされていないことも考えられます。海欣(Haixin)の崩壊のようなケースはまだ多く見受けられません。中国の同族会社の世代交代はまさに今行われているため、現時点で明白な失敗はなくとも、未来を予測するのは困難です。


承継はギャンブルではない

Q:中国の同族会社は他国で5-6世代かけて築いてきた成果を短期間で達成しています。それが問題の原因とお考えでしょうか?


A:中国企業は諸外国の同業他社が300年かけたものを30年で達成させてきました。同族会社の成長の軌跡は中国ビジネス界の縮図であり、長い間抑制されてきたエネルギーが爆発し"今を生きる"のです。通常は創業者が考えうる戦略を全て実行し、3代あるいは4代かけて着実に成長を続けることができる企業はわずかです。そのため、中国では最も成功を収めた人間でも、トップに上り詰めて3年から5年しかもたない、と言われ次々に新たな成功者が現れます。それは、下の階を強固にすることなく次々に上層階を作っていくようなもので大変心もとなく感じます。大きい賭けに出ることを好み、全てを失って初めからやり直すという最悪のシナリオを想定し、単に綱渡りをしているだけのような事業家もいます。これは典型的なギャンブル的経営ですが、中国文化は他に比べて博打に寛容だということも一因かもしれません。

また、中国企業はスピードを最重要視します。なぜなら、環境の変化が激しく、変化の幅も大きいため、待つだけでは勝機を逃すからです。自らがチャンスをつかみ成功につなげるという手法は、かつては効果的でしたが、ある程度の規模になり経営資源を蓄積したならば、成長の持続は同族会社にとっては大きな挑戦となります。ふさわしい人物がいないケースもあるでしょうが世代交代しないわけにはいきません。


Q:バランスが大事ということでしょうか?

A::"陰と陽のバランス"が大事であるように、同族会社では先代から引き継いだ経営資源と後継者による変化のバランスをとることに最大の努力を払うべきです。公的企業にくらべて同族会社ならではの感覚や、一族の文化というものを引き継ぎやすいと思います。  


世代交代にはオープンマインドで臨む

Q:創業者世代は世代交代にどう対応すべきでしょうか。


A:斬新かつ寛容であるべきです。先日ある受講生と面談しました。彼はある企業の創業者の婿であり、すでに大きな責任のある立場にありますが「義父は実の娘よりも婿である私の方を気に入っているのです」と言います。実の娘は現場からたたき上げてきたのに、彼は他の企業で数年勤務した後にシニアエグゼクティブのポジションを与えられたのです。このケースではおそらく優れた息子がいない場合には婿養子を迎えるという日本的な考え方を取り入れているのではないかと思います。

多くの二代目は家業の継承に消極的で、その傾向は特に伝統的な製造業の場合に顕著です。彼らはインターネット、金融や投資の世界でのキャリアアップを好みます。彼らに対してはやりたいことや成長性のある分野を経験させ、経営はプロのマネージャーに任せる。実はこれは良いやり方で、事業は安定成長し、創業家の経済的な根幹を揺るがすことにはなりません。二代目が投資は思ったほど可能性がなくお金にならないと感じれば、より堅実な仕事に就こうと考えるかもしれませんし、外の世界で拒絶されれば家業に戻りたいと思うかもしれません。これは良い経験になると思います。


Q:承継を成功させるために創業者世代はどうすればよいとお考えですか?また、持株の扱いについてはいかがでしょうか。

A:二代目は創業者に比べると能力の他面性や起業家精神に欠ける傾向があると思います。多くが海外に留学し、困難を経験したことがありません。将来、事業の行方が自分にかかっていると知ればごく若いうちから業務に関わるようになるかもしれません。世代交代にあたっては、創業者は二代目に新たな世界を経験させるべきです。ある企業のケースでは、創業者は承継にあたり資産を譲っただけで業務にはベテラン社員を関与させず、二代目は自らが組織したチームで新体制をスタートさせました。

これは明の洪武帝(初代皇帝である朱元璋)の帝位継承過程に類似しています。長男の死後、洪武帝は孫の即位前に、全ての閣僚を殺しました。洪武帝は新皇帝に対するあらゆる脅威を排除したつもりでしたが、息子の一人(のちの永楽帝)が造反するとは思ってもいませんでした。河北鋼鉄グループの場合は、創業者はその企業が一族の資産であるという考えから孫を後継者に指名しました。満州族が建てた清では漢族の伝統的な帝位承継制度を廃止し、皇帝の息子は全て帝位継承権を持つというルールを確立しましたが、内部抗争を激化させるというマイナス面もありました。世代交代は時間をかけて着実に行うべきもので、例えば、Fotileの創業者、Mao Lixiang氏は、跡継ぎに対して補佐を3年、後見に3年、さらに3年間指南する、という過程を経て引継ぎを完了させました。これは合理的な手法だと思います。


海外企業買収の幻想を絶つ

Q:中国平安保険が主催するChinese Family Business Succession Awardのリサーチチームは、多くの二代目が企業を承継後、企業買収を含め海外進出を選択していると報告しています。創業者と二代目の考えに差異があるとお考えですか?また、海外買収に際し注意すべき点はありますか?


A:買収に対する根本的な考え方が異なるのではなく、環境と経営資源が変化したからだと思います。創業者世代は海外M&Aに対応可能な経営資源を多く持ち合わせておらず、会社の規模も世界展開するには小さすぎました。しかし、同族会社であっても海外M&Aを二代目に委ねる必要はありません。例えば、食肉加工業の双汇グループのWan Long会長がアメリカの豚肉生産・加工企業の買収を決めたのは70歳代のときでした。重要なのは年齢ではなく、買収および買収後の経営について適切な判断を行うことなのです。

二代目世代は海外で教育を受けた経験から、創業者世代よりも買収後の経営に自信を持っているかもしれません。海外での勤務経験や大規模な多国籍企業での管理職経験がない場合には、国内外での上級管理職経験者のサポートなしに買収後の経営は難しいかもしれません。


Q: 企業買収の適切な時期や効果的な手法についてはどうお考えですか?

A:今や中国には豊富な資金があり、人民元は将来的には下落していくと考えられるので、買収を行うには良いタイミングでしょう。しかし、それよりも重要なのは最適な買収先を見つけることです。中国企業は往々にしてドイツ企業、しかも同族会社の買収に非常に興味を持ちます。と言うのもそれらの企業は小規模かつ優秀にもかかわらず、ニッチなマーケットで活躍しているために知名度が低いからです。しかし、そのような企業は通常、非常に誇りが高く、会社の売却に対する感情的な葛藤が大きいので買収が成功することは稀です。仮に売却を決めても、デリケートな対応を求めます。相手が粗野だと感じれば、メンツを失ったと感じるかもしれません。本学OBの中には海外M&Aファンドを設立している人もいます。ヨーロッパ人の買収専門家をCEOとし、一族が売却を決めたら、ファンドが一定の期間を経営を引き継ぎ、中国企業に売る。これは効果的なマッチングサービスといえるのではないでしょうか。


※本記事は下記の記事を翻訳・編集しています。

http://english.ckgsb.edu.cn/news_content/ckgsb-associate-dean-teng-family-business-succession-no-longer-taboo-topic-china

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