コラム

HOME > コラム

コラム

長江商学院OB探訪  競争の激しい火鍋業界で一歩先を行く「海底捞」

日本のテレビ番組でも放映されたことがあるのでご覧になった方もいるかもしれない。「海底捞(ハイディーラオ)」は年間3億人民元(約60億円)の売上げを誇る人気レストランチェーンだ。15年前、四川省簡陽市で1号店を立ち上げた張勇CEOは2010年に当校のEMBA講座を修了している。現在は、北京、上海、西安をはじめとした大都市圏で75店舗を展開しているが、会社の最終目標は利益追求ではないという。


"火鍋"とは煮立ったスープに新鮮な肉や野菜などを入れて食す中国風の鍋料理だ。シンプルな料理なだけにスープと食材が重要で、参入障壁は低いと言える。それだけに、火鍋に特化した業態で成長を遂げてきたということは驚きに値する。

いまや「海底捞」は中国屈指の火鍋レストランブランドの一つだ。強力なリーダーシップで、顧客と従業員の満足度の高さを維持してきた、張CEOは中国ビジネス界の異端児的存在だ。

まずは顧客満足度を高める工夫を見てみよう。人気チェーンだけあって、2-3時間の行列は当たり前だという。その待ち時間を快適に過ごしてもらうために、インターネット接続、靴磨き、マニキュアなどのサービスを無料で提供している。テーブルをだしてトランプなどに興じる様子は行列することを楽しんでいるようにさえ見える。

着席すればすぐにホールスタッフがやってくる。中国ではまだまだ一般的ではない気持ち良い挨拶と熱いおしぼりのサービスだけではなく、火鍋のスープで汚れないようにエプロン、ヘアピン、携帯電話保護ケースなども渡してくれる。

また、客席のすぐそばで行われる麺打ちパフォーマンスも人気の一因だ。男性職人がきびきびした動きで縄を扱うように生地を伸ばしていく様子は一見に値する。お客は火鍋をつつきながら無料のショーを楽しめ、お客がその画像や動画をインターネットで公開すれば店舗側にとっては広告効果も得られる一石二鳥のパフォーマンスだ。


メニュー開発にも余念がない

食事客の多くは陽気でフレンドリーなスタッフがこのレストランの最大のセールスポイントと言うだろう。dianping.comという人気レストランブログの中には「"お客様は神様"として扱ってくれる」とコメントしている海底捞ファンもいる。質の高いサービスを提供するために、社員の意識向上にも努力を惜しまない。上司からの信頼と適切な待遇があれば、従業員もより勤勉になるというロジックだ。"従業員は顧客よりも重要"というスローガンは、ビジネス界の主流派とは相反する独自の経営哲学を現している。

待遇面で特筆すべきは、社員寮だろう。全ての社員が、中国人の多くが高級と羨むエアコン、固定電話、ケーブルテレビにインターネット、24時間給湯システムを完備したレジデンスに入居可能だ。業務拡大に伴う従業員のキャリアアップにも配慮しており、管理職クラスには現場からのたたき上げも多い。 

上記のような工夫を行っていても、火鍋自体はシンプルな料理で調理も簡単なことからレストラン間の競争も激しく、人気チェーンと言えども料理による差別化は容易ではない。

そこで、張CEOは食材の品質と鮮度にこだわる戦略を選択した。仕入先を厳選し、国内各地に独自の流通センターを持ち、厳格な基準で品質の均一化と保持に努めてきたお蔭で、どこの支店でも同じクオリティの食事を楽しむことができる。

メニュー開発にも力を入れており、スタンダードな四川風火鍋に加えて、1年に1~2種の新メニュー、シーズンごとに5~10種類の野菜料理を投入している。また、具材に魚介類を取り入れたり、鍋を二つに仕切り、2種類のスープを楽しめるようにもした。また、無料サービスの改善も怠らない。例えば行列客に豆乳を無料提供した際に、濃厚すぎるという不満がでたことがあった。レストラン側はすぐに豆乳の風味を改善するとともに、レモネードも選べるようにした。

料理のレベルの高さは言うまでもなく、顧客サービスへの創意工夫も特筆すべきものがある。しかし、張CEOはそれが万能ではないことも知っている。「海底捞」は家族の団らんや各種パーティーなど、食事に時間をかけることのできる人々の支持率は高いが、時間がなければ他のレストランを選ぶ人々も存在するのだ。それでもなお"サービス"がおろそかになりがちな国において、顧客と従業員の両方の満足度を高める戦略が大きな勝因になっているのは明白だろう。



本記事は下記の中国語記事の一部を抜粋、翻訳・編集したものです。
http://www.ckgsb.edu.cn/Article/Detail.aspx?ColumnId=401&ArticleId=6477.

©2015長江商学院 無断転載を禁じます。

MBAビデオ
アクセス
お問い合わせ
コラム