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ゴールは"クルマ移動のワンストップ・プラットフォーム"の提供

日本でもタクシー配車アプリが普及し、数社がシェア争いを繰り広げている。中国ではさらに激しい競争が巻き起こっていたが、最大手の嘀嘀打車(Didi Dache)と快的打車(Kuaide Dache)が合併するというサプライズが起こった。

中国最大のタクシー配車手配会社となった、嘀嘀&快的はウーバーをはじめとした同業者にとって脅威的存在になりつつある。タクシー配車アプリ業界を牽引する2社の合併は、何かを暗示させるようにバレンタインデーに発表された。中国国内のタクシー配車業界で99%のシェアを握ることになった嘀嘀&快的は、速やかに毎日何百万もの配車がある自家用車市場に参入した。

新会社は低コストのサービス"一号快車"をスタートさせた。これは中国ウーバーに急速な成長をもたらしたライドシェア(相乗り)サービス、"ピープルズ・ウーバー"に対抗するものだ。ウーバー同様に一号快車も非営利で、自家用車をパートタイム、あるいはフルタイムで登録させる。これはいわゆる白タクで、中国の法律ではグレーゾーンにある。ちなみに一号快車を使った場合、通常はタクシーに比べると30%程度安く乗車できる。自家用車の組織化は法的にはグレーゾーンにあるにもかかわらず、嘀嘀&快的は交通サービス拡大に乗り出した。

嘀嘀の程維・創業者兼CEO(嘀嘀&快的は組織としては別々に運営されており、共同CEO体制をとっている)は、如何にして嘀嘀が過酷な競争に生き残ったか、そして合併後の新会社はいかに交通業界でのビジネス拡大を目指していくのか。長江商学院のイベントに参加した程CEOの発言をまとめた。

報奨金戦争に終止符をうった
嘀嘀と快的が手を組む前は、両社は血みどろの争いを繰り広げてきた。2013年夏から2014年後半にかけて、両社はタクシー運転手の報奨金や利用客への割引費やした金額は7億米ドルにものぼる。

テンセントやアリババなどの投資家を巻き込んだ空前の現金ばらまき競争で、両社は何百万人もの利用客を獲得した一方で、配車アプリ業界全体の利益はごくわずかなものとなり、底辺への競争に陥った。「悪循環の競争に陥っただけと分かってもやめられませんでした。中国のインターネット産業においては、もはや"無料"戦略は有効ではありません。」

大盤振舞の報奨金制度がいつまでも続くはずがなく、両社は2月、密会を経て合併に至った。程氏は交渉の詳細や株式の持分について明らかにはしていないが、早い段階で賢く資本の配分を行うことの重要性を強調した。

嘀嘀側の財務戦略のキーパーソンは、現社長の柳青氏だ。柳氏は2014年7月に、12年間務めたゴールドマンサックス社長から嘀嘀COOに転身した。レノボの柳会長を父に持ち、ハーバード大学を卒業した才媛はコネクションも多く財務家としても優秀だった。マスコミによれば、嘀嘀に入社する前はゴールドマンサックス代理人として投資案件をまとめようとしたこともあるという。 

「合併前は報奨金の支払い、競争に打ち勝ち、いかに差別化を図るか、それだけを考えていました。しかし、合併が成立した今、それらはもはや問題ではありません。」と程CEOは言う。


配車アプリ業界を制し次の目標へ...

 

タクシー以外の分野へ参入

程CEOは「合併により両社は競争による混乱から逃れました。だからこそ、一号快車のような新たなサービスを迅速に展開することができたのです。次のステップは、これからの需要の要となる相乗りと運転代行業界への参入です」と言う。
競合するウーバーや易到用車(Yidao Yongche)と比較すると嘀嘀&快的というブランドはタクシー市場で得た圧倒的な知名度という強みがある。より収益性の高い、非タクシー分野参入と聞けば、多くの人は徐々に脱タクシー事業へシフトしていくと思うだろう。
程CEOはそのような考えを否定した。嘀嘀はタクシー市場においてより大きなゴールを掲げているという。「私達のテクノロジーの進化で空車率がゼロになる日がくることを願っています。その実現は交通効率を飛躍的に上げる事になり、タクシー業界にそのようなプラットフォームをもたらせば、収益化の手段に事欠くことはないでしょう」

マスコミによれば嘀嘀&快的は1日に約3千万ある配車オーダーのうち、最高で3分の1まで獲得可能なポテンシャルがあるという。しかし、彼らが報奨金を廃止し、街には白タクが増えているいま、配車オーダー数の増減については明らかになっていない。

中国では企業規模がモノを言う

程CEOは、会社規模拡大の早さが嘀嘀の成功要因のひとつだったと言う。創業時には彼自身も街に繰り出し、タクシードライバーに向けてアプリの普及に努めたという。運転手に自社のアプリを使ってもらうためには様々な戦略や手法があるが、嘀嘀が採用しなかったのはハードウェアの配布だ。

嘀嘀の創業当時、スマートフォンを持つタクシー運転手は殆どいなかった。競合先の中にはハンドセットやタブレットを無償配布する企業も現れたが程CEOはそれを禁じ手だと考えた。スマートフォンを無償で配布すれば運転手は他社のアプリもインストールするだろう。

その経験から、白タク市場でも新車の貸与やリースはしないという。「会社の経営資源は限られている。間違ったところにエネルギーをつぎ込めば競争力を失ってしまいます。」

急速に会社を拡大した嘀嘀は最大級のベンチャーキャピタルの目にとまり、そこからの支援がさらなる成長を促した。今の嘀嘀&快的の目標は主要な競合先の10倍以上の会社規模になることだと嘀嘀のマーケティング担当副社長は我々に語る。「ウーバーとの最大の相違点は我々の会社規模です。中国では異なるビジネスモデルを持たない限り、"小さくてかわいい"だけではやっていけません。」

「行先を告げるだけで、そこに行ける。」程CEO氏にとって嘀嘀&快的の未来のゴールは、ナビゲーション、タクシー、相乗り、運転代行から公共交通までを含んだ、車を使った移動のワンストッププラットフォームの提供だ。


本記事は下記を翻訳・編集したものです。

http://knowledge.ckgsb.edu.cn/2015/05/12/china-business-strategy/didi-dache-and-kuaidi-dache-to-do-more-than-just-drive-you-home/

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