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アメリカで上場する企業が中国回帰をめざす理由

少なからぬ数の中国企業がアメリカでの上場を廃止して、好調な上海と深圳の株式市場への上場を模索しているという。今回はその背景を探った。

6月24日のブルームバーグの報道によれば、アメリカで上場している中国企業24社に対して株式非公開化オファーがあり、その総額は約250億米ドルにのぼると言う。今のところ、最大となるのは北京に本社を置くインターネットのセキュリティソフト会社、奇虎360で金額は90億米ドル。同社は2011年にNY証券取引所に新規公開を果たし、その時価総額は176百万米ドルとその年の最高額を記録している。

アメリカで上場している中国企業の上場廃止は今に始まったことではない。2011年から2012年半ばにかけては、短期売買のターゲットになったり、不正経理やその他の不法行為の捜査対象になったなどの理由で上場廃止の機運が高まった。それは上場を維持している企業にも影響を及ぼし、特に比較的小規模の企業は株価が下落すると上場を廃止するよう圧力がかかった。

しかし、現在の上場廃止機運の高まりの背景には以前とは異なる理由がある。例えば携帯専用SNSアプリ運営の「モーモー」。2014年12月ナスダックに新規公開し、時価総額は216百万米ドルを記録した。そして、モーモーの株価は下落するどころか、昨年12月より15%上昇している。アメリカでの株価が上昇していても、中国の方がよりチャンスがあると考える企業もあるのだ。

彼らの考えには根拠がある。最近は騰落率が高くなってはいるが、昨年に比べると上海総合株価指数は116%、ITや技術系の新興企業向けの深圳チャイネクスト指数に至っては165%も上昇している。アメリカで上場している中国企業の株価収益率は平均で17倍、それに対してチャイネクスト企業の株価収益率は平均で126倍だとブルームバーグは報じている。 
アメリカのヘッジファンド、EJFキャピタルのパートナー、Vitocor Li氏は「資本は常にさや取りの機会を狙っています。"さや取り"と言っても何倍もの差がでてくるのです」

Li氏は、異なる市場でバリュエーションギャップが発生する事例として瀋陽に本社を置く3SBio社を挙げた。ナスダックに上場していた同社は、2013年、340百万米ドルで非公開化を断行。今年の6月11日香港株式市場で新規公開し時価総額は711百万米ドルを記録。2年前の2倍と評価されたのだ。レバレッジドバイアウトで非公開化すればその差はさらに広がる可能性があるのだと言う。

中国本土の株式市場となるとさらに金額が膨らむ可能性がある。上海本社のデジタル広告企業、フォーカスメディア社はナスダック上場で27億米ドルを調達したのち、2013年に上場廃止。同社は深圳の休眠会社を利用して今年後半の上場を計画しており、その価値は74億米ドル余りになると見積もっている。"さや取り"で得られる利益は莫大なもので、例えば、本土市場の株価が50%減になったしてもまだ利益が残るとLi氏は言う。

今回の株価上昇の前からバリュエーションギャップは存在していた可能性はあるが、企業は規制によりそれを活かすことができなかった。中国の証券関連法は、売上、キャッシュフロー、成長率など上場前に満たすべき基準が厳しく、赤字に陥りやすい新興企業は上場ができない。また、中国人投資家は国内市場でのB株(外資系法人株)取引を禁じられているために、外資ベンチャーキャピタルから支援されている企業は市場から締め出されているのが現状だ。

しかしルールは変わり始めている。証券規制委員会と李克強首相をはじめとした複数の政府高官は上場基準の緩和と、(アメリカで上場しているIT系の中国企業が主に適用している)変動持分事業体の上場認可をほのめかしている。また、中国工業情報化部は中国国内におけるEコマース企業の外国人保有比率の制限(50%)撤廃を表明している。

しかし、起業やイノベーションを推進する政策をとったとしても、アメリカに上場している企業の中国回帰は大きな影響を与える可能性があると、長江商学院の欧陽輝(オウ-ヤン・フイ)金融学教授は指摘する。教授によれば、中国の資本市場の規模は限られているため、政府は海外での上場を推奨すべきで、また、国内での再上場を図る企業は中小企業と競合し、まだ十分に競争力の整っていない企業を脅かす可能性もあるという。「世界資本はアメリカ経済の発展に大きく貢献してきました。中国も同じように世界資本を上手に利用することが必要です。」

本記事は下記を翻訳・編集しています。
http://knowledge.ckgsb.edu.cn/2015/06/24/finance-and-investment/stock-exchanges-goodbye-new-york-hello-shanghai/
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